- 2012-07-13 (金) 13:34
- 読書レビュー
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに、人間存在の象徴的な姿を追求した書き下ろし長編。20数ヶ国語に翻訳された名作。
もう10年以上前に読んだんですが、この一冊で一時期安部 公房さんにはまってしまい、読みふけました。
自分が本を読む楽しさの一つに、「その中に没頭できて夢中になれること」が挙げられますが、自分は村上春樹さんよりこの安部 公房さんを強くお勧めします。「中に没頭する」とは、読むうちに登場人物と心が同化してしまい、いつの間にか一緒に体験してしまう事・・・・・・・なのですが、この方の文章力のすごさは半端ないです。とにかく本好きの方は、この一冊を読んで本を語って欲しい・・・・・・・と思ってしまうぐらいにすごい。
手に汗にぎる比喩表現。心を揺さぶる、心情描写。
あらすじを読んで頂ければ解るように、絶対に有り得ないストーリーなんですが・・・・主人公が感じる困惑と希望と絶望。「砂の底の状況」が「誰でも思い当たる、突然に襲ってきた理不尽な問題」と捉えると、そんな状況に陥った時の人間の心理や思考、この主人公が思いつく手段や葛藤が自分自身と重ねられ・・・・・・・・
・・・・・・・とにかく必見です。絶対に読んだ方がいい一冊。
最近、新しい本を読む時に 「あ~なんか集中力が無くなったなぁ~歳かなぁ~」 なんて考えていたんですが、改めてこの本を本棚より引っ張り出してみて、この間違いに気づきましたよ・・・・・・・・正直言って、『昔の作家さんは半端じゃなく凄かった』間違いなくそう感じるし、この本を手に取ってくれた方ならわかって頂けると思います。お薦めの一冊です。
携帯の方はこちら⇒砂の女 (新潮文庫)
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