- 2012-05-19 (土) 17:01
- 読書レビュー
内容紹介
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
そんじょそこらにある特攻隊の感動ストーリーとは一味も二味も違います・・・・・
出張の行き帰りの新幹線で読もうと気軽に手にとった本ですが、、、、、オーバーに言えば人生への捉え方や向き方が変わってきました。
以前、「いつまでも、いつまでもお元気で」という特攻隊の方々が最後に書き残した最後の言葉を集めた本をレビューさせて頂いたのですが、それはそれで今でも心に残る一冊ですが今度の本は・・・・・なんというか、読んで良かった・・・・と心から思わせてくれる本です。少しずつ狂ってきたこの国には無くてはならない本というか、、、、まぁまずは自分自身の生き方ですね。今の時期に読ませて貰った事に心から感謝です。
ストーリー的には、司法試験に落ちてそこからズルズルと精神的にも投げやりになっていく弟が、新聞記者の姉の手伝いから特攻で亡くなった祖父 『宮部久蔵』 を当時の様子を知っている生き残りの方を尋ねてストーリーは進行していく。
今でも特攻隊や予備生として戦後から残られている方々はもうわずかだとは思いますが、小説ではその方々を通して「宮部久蔵」という祖父の姿が浮き彫りにされていく訳ですが・・・・・・・それぞれ、表現の仕方や印象が全然違うんです・・・・・すっごい引き込まれていく。
口ぐちにその”祖父”を語る中から、戦時中から戦後の日本の状況を含め、特攻隊に散った方々の心情や想い。封鎖的な日本の状況や環境、そして何よりも最前線の情報や零式戦闘機に対する知識に驚かされます。改めて、自分達のご先祖様方々はすごい戦争をやっていたんだなぁ・・・・・・・・と。
バラバラになったパーツが、一枚の「宮部久蔵」として完成した時。
するすると解けなかった謎が、気持ち良いように解けていく爽快感と共にじわりと湧きあがってくる、当時の方々が口には出せなかった想いに言葉には言い表せないほどの感動を覚えました。自分達のご先祖様、戦時中戦後の祖父母の話としても、当時はまだ20歳前後の方々だった訳ですからね・・・・・・・・・・
すごく難しいテーマだったと思いますが、特別に特攻隊を美化している訳でもなく、あからさまに戦争だけを非難している訳でもなく、、、、、最後に残るのは、「自分らしい生き方とは何だろう?」ということと、「家族と平和の大切さ」。もう戦争を題材にした本が限りなくある中で、なんと不思議な本なんでしょう。最後まで飽きさせないストーリーはやっぱり話が進むに従って変化していく、弟(人生)と姉(プロポーズされた相手)の心情の変化がどこか今の自分達と重なってしまう所でしょうか・・・・・・・・上手い。
途中で主人公(祖父)の戦友である男が、新聞記者とケンカするところはすごく考えさせられました。このまま日本はどうなっていくんだろう・・・・・・・・いろいろな方面から考えさせてくれる小説です。
誰もが今の自分の生き方を見直し、考えさせられるに違いありません。
混沌とした国・混沌とした生き方に、新しい一石を投じてくれるお薦めの本です。
あなたはこの本を読んで、どんな人生を選ばれますか?
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